■松木講師によるヒゲコ打ち付けに関する実演。 ■続いてチリ際の実演です。鏝運びも参考になります。
■京都の飯田講師による実演。 ■地肌・鏝肌を生かすのが重要。
■まずは柱周りにヒゲコ・トンボの取り付けから作業はスタートして行く。この作業は荒壁の基本であり、
阪神・淡路大震災でも、この工程を施された荒壁が崩れ落ちることはなかった実績があり、日本建築の伝統的
手法の一つと言える。
続いてチリ廻りを押えて行く。 壁はチリ廻りが重要で特に左右のチリ廻りは目線も届くところ、講師達の
実演でも左側面から押さえているのが良く判る。 続いて中塗の下擦り(したこすり)に入る。上の動画でも
確認できると思うが、受講生の多くが全体を一気に塗っているのに対し、講師陣はやはり周辺から塗り始めている。
これは塗り圧を一定に抑えるためで、腹がむくれないのを計算してのこと。
ちなみに大津磨きや漆喰磨きの場合はわざと目線を中央に集めるため、腹を膨らませる手法を取る場合もある。
「切り返し仕舞い」について・・・上塗を掛けず、中塗の状態で完成とする、スサの短い中塗の状態を言う。
鏝は地金を使用し磨き上げるのではなく、地金の鏝肌を残すのがポイントとされる。

★使用された工具:ビケコ鎚と釘を最後まで、シッカリと打ち込むための釘〆(クギシメ)。
★使用された鏝:チリ鏝地金鏝切り返し鏝


■左官技法の伝承を願い、開催された左官講習会。
その源流は諸説あるが、昨今ではその規模からも
篠山左官組合の活躍は目覚しい。
そして、今回の「左官を考える会」主催の開催。
発起人たる植田 俊彦氏と賛同された「城かべ」
近畿壁材工業のお膝元、淡路の地で開催された。

■これまでの講習会とは流れを変え、より原点を
見据えた講習がテーマであり、参加者は若手が
多く。  160名を越える参加者中、1年目〜4年目
の若手が20数名を占めることとなった。
これは世代の枠を越えた大きな成果と言える。

■参加者からも「わかり易い」など、評価も高く、
何よりも受講者の殆どが実技を経験し、講師の直
接指導を受けたのは価値がある。
これも広い会場と大掛かりな設営による準備の
賜物だろうと、改めて主催者側の熱意に感謝
させられた。
■テーマに沿った講習に続き、夜間は講師陣に
交じり、久住有生氏が施工に対する思いや
現風景の環境維持の重要性を熱く語ってくれた。

翌日には「竹小舞編み」の実演や、ジャバラの
施工など、「おまけ」としても、一つの講習会が成り
立つ程の講義・実演が成された。
■「左官」は奥深い。
何よりもその可能性を実感できた二日間でした。
今後、多くの参加者の中から、工務店や施主に
その可能性をアピールし、実戦に取り組む者も
生まれることだろう。 そんな時も、この日の仲間
との出会いを忘れないでいて欲しい。
■終始、裏方に
徹した近畿壁材
代表。そして、
従業員の皆さん。
お疲れ様です。

■以下は講習会の【おまけ】として実演または指導されました。 何とも贅沢な【おまけ】の数々でした。
■【小舞下地工法】
本講習課題である中塗仕上は本来はこの
竹小舞を下地として完成される。
真竹の四つ割りを使用する「京割」。
丸竹のままを使用する「長割」等、過去には
地域差があったそうですが今日では「京割」を
用いた左記施工方法が主流となっている。

■土と地金鏝の関係を語る人見氏(篠山)。録画環境のため、なかなか聞きとれ難いが、
とても内容の濃いお話を語ってくれている。 土壁の性質と鏝(ハガネ)の性質を熟知して
いるから語れる内容である。
★下記に内容の一部を抜粋してみました。
「材料を均一に塗ると言うことは、ただ真っ直ぐに(平らに)塗ることだけを指すのではなく
砂と土とスサのバランスを保ちながら全体を塗り付けることを言う・・・」
「本焼等、硬度のある鏝を使用するのは、本来意図的にアマやノロを出すために使用する
もので土壁ではあえて、硬度の無い地金を使用するのが基本である。 そうでないと一部
だけにアマが集中し、材料のムラが出来てしまい、伸縮やクランク要因となってしまう。」 
「洗い出し工法でも、この理屈通りで、硬度のあるハガネを用いるとノロを弾いてしまい
種石が流れる要因となってしまう。」
※人見左官工業(丹波篠山):数々のキャリアを持ち、地元に限らず多方面で信頼を
集めている左官の名工。 同地の左官講習会でも常に裏方として大活躍している。

【蛇腹引き】洋風建築の漆喰塗り工法で蛇腹の施工方法では
置引工法・現場引工法等がある。
木製の土台に金属枠を専用工具(蛇腹用型折器)を使用し、
加工した物を取り付けた引き型を利用し施工される。
山本氏は型枠にまで当たる引き型を用いているが、そうでない場合は
充て定木を用いる場合もある。

単純に思える工法だが、実際は下方向からしっかりと盛り、
施工するなど、経験が物を言う。
現在では洋風形式に捕われず空間を生かす手法とし店舗など、
左官ならではのアイテムとして
用いられているため、左官技量向上に於いて収得しておきたい
【技】の一つと言える。

【赤福】でのかまど施工なとで今も培われている「かまど」の磨き工法。
「かまど」は使用する
度に熱やススによる劣化があるため、定期的な磨き補修が必要とされる等、
贅沢な作品ではあるが、その風合いに味のある作品なだけに現在では
和・洋・中に関らず飲食店では注目を集めている。
昨今では耐熱タイルを敷き詰めた「かまど」も人気を集めている。
また、個人宅ではスス焼けも風合いとして楽しむ者も多い。

■講習会の最後を飾ったのが、講師である松木氏が提唱するこの工法。
スサ・糊・つのまた・ハイフレックスをブレンドし、ボード下地でも劣化が少なく使用する鏝も
安価ながら土の風合いを残した現代風な土壁仕上げである。
講習会では実際に多くの参加者が施工し、その確かさを実感している。
また、自ら材料のブレンドをせずとも、昨今のメーカー品でも近いの既成調合材料が
生産されているので鏝選びとしても応用できる。
ただし、既成品を使用せずとも調合の手法を身に付けることで既成品より
安価に材料が調合できることも指導してくれている。
※左動画映像は講師である川口氏による実演です。
★「現代風糊土仕上」講習会会場にて使用された鏝が商品化されました!
※松木氏の依頼を受け、生産に携わったのが五百蔵鏝製作所です。
同社は丹龍・晴龍シリーズの生産者としても著名ではありますが、実はあの「ペンギン・シリーズ」の
生産者なのは知る人ぞ知る事実。 今回の鏝でばペンギン・シリーズのノウハウが生かされています。
そして、独特の形状が更に施工を容易にしてくれています。 いずれにしろ、より実践的で、対価格にも
配慮した独自のノウハウを惜し気もなく公開して下さった松木氏の懐の深さに感謝です。
大変お待たせいたしました!「松木モデル」ついに完成です。

★鏝の形状から図面を起し、細部に渡る拘りから作り上げた「松井モデル」。
その拘りは一切の妥協を惜しまず、現代建築に対し、常に使用することを
目的としながらも、美しさを追い求めた「鏝」。

各サイズ事に形状バランスを考え、背金(せがね)から作り分け、絶妙の
バランスに仕上げました。
今回は当方の要望により、酢酸ビニル樹脂を含んだ材料にも対応できる
よう、ステンレスの製作を依頼致しました。
手頃な価格、そして珪藻土系などの現代建築を意識しながら、鏝のある
べき姿を追い求めた鏝。 そのバランスを是非、お試し下さい。
                                   (詳しくはここ)

■講習会総評
:講師、参加者共に熱い内容の講習会でした。
東は秋田、西は宮崎からと、その参加者の幅広さからも伺えるように【左官技量の向上】を願う者の多さが伺い知れます。
また、町場・野帳場の枠を越えた参加者の熱意が本講習会をより深めているのも事実で、特に若手による、その情熱の深さには
改めて感動させられました。   講師と参加者と言う立場に違いはあれど、共に探究心を追い求める心は変わりません。
良いものを作る!人に感動を与える! 左官が持つオンリーワンがここには生きている。 そんな感動を憶えた講習会でした。
今後も活動を続ける「左官を考える会」是非、注目して下さい。
ご要望を下されば「職人魂」も多くの研修会を取材させて頂きたく思います。 ご連絡をお待ち申し上げます。  担当:木田まさひろ

参考リンク:上田モデル鏝五百蔵製作所梶原製作所

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